被爆六十周年記念事業 コンセンサス会議
歴史的証言に基づくヒロシマ平和コンセンサスの試み

主催: ワールド・ピース・ヒロシマ
共催: 財団法人広島平和文化センター
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平和社会建設へ向けて

中里博泰(国際地球環境大学教授)


悠久の人類史の中で、学問の諸分野によって得られた理想的な平和社会についての知識や情報は、すでに膨大な量に達しています。にもかかわらず平和な理想社会とは何かということについて、専門学者の間に一致した意見の存在しないことには注目すべきことです。理想社会の定義として一般的に承認されたものは存在しませんし、実際には専門分野ごとに、それぞれの立場から理想社会を定義しようとする傾向がみられます。
しかし現代社会においては尚、生命を脅かす地球温暖化や環境破壊、戦争や犯罪や略奪、核保有国の存在と核拡散、飢餓や貧困、病気や自殺など理想とは程遠い社会の現実があり、今後も収束する見込みは立っていません。
そこでたとえ大雑把であろうとも、誰にでも受け入れられやすい理想社会の定義を暫定的に策定する必要性があると思われます。
暫定的な定義の策定段階では、単に物質的な問題のみならず、精神的な面にも重きを置き、理想社会が達成できない根源的な問題と、根本原因を解明すると共に、問題解決と原因除去の方法や条件についても言及する必要があると考えられます。
また暫定的な定義の提言のみならず、提言に基づく理想的な社会を確立するための条件設定を行い、これを満たすモデル的なコミュニティを理想社会の雛形として実際に作らない限り、理想社会の実現達成は不可能であろうと考えられます。
そこでワールド・ピース・ヒロシマ主催の平和コンセンサス会議に求められることは、理想社会実現へ向けて、国家や宗教の論説など思想的な部分に入ることや、過去の歴史に触れるのではなく、同じ地球に住む人として生きるための生活文明のスタンダードを決定し、モデル的なコミュニティとして達成できるよう生活文明(システム化された生命維持のための衣食住のあり方と電気ガス水道や交通システムなどの設備)の物質的条件設定を行い、これを世界の地域性や気候風土に合わせ改良し、理想的な生活空間として提供し、精神的には国家や宗教が理想とできる社会構造(政治・経済・教育・税金・お金などのあり方)のスタンダードを決定し、モデル的なコミュニティとして造り見て体験できることで、理想を単なる理想として終わらせるのではなく、達成できることを提言することにあると思います(人として生きることは複雑ではないはず)。
そして最終的には提言に基づく理想的な生活空間を担うモデル的なコミュニティが、広島や日本の中に実際に造られ、グローバルなスタンダードコミュニティとして世界各国に受け入れられ、人々が実際に移り住み暮らすようになれば、やがてコミュニティ間での連携が生まれネットワーク化が起こり、連鎖と連携による大きなコミュニティとなり、国自体が理想的な社会へと変化することができると考えられます(国家と宗教の現実的な超越と融合する方法)。
これが実現すれば、人類が目指すべき世界の融合に向けての物質的な国境は外れ、精神的にはNHKサイエンススペシャルで人体小宇宙と例えられたように、個々の頭の中で分裂して形成されてきた小宇宙(自分・自己・人間)が、まさに地球を超えた大宇宙の中で連邦として繋がり、宇宙国(地球国というような小さな概念を彷彿とするより大きな概念)という新たな概念が生み出されることによって、人の心は、一つにまとまる方向性を見出し融合することで、本質的な理想社会の実現が可能になると思います。
宇宙国という新たな概念が生み出されるからこそ、世界中の国家や宗教は宇宙という広大な空間に浮かぶ地球というとても小さな孤島の中で、一つになることが必然であることが理解できるように精神的な成長によって、理想は達成され完成することができるのではないでしょうか。
しかし、このようなコミュニティの拡大による世界の統合を、一つの国家や宗教や企業が行えば、人々は単一組織による支配を危惧する可能性があります。
今回のコンセンサス会議はこの問題に対して、理想的な生活空間をモデル的にコミュニティとして造り世界に示すことで、人々の不安を払拭すると共に、コミュニティ間の融合によって芽生える宇宙国という新しい概念を生み出すことで、人種や身分、国家や宗教などが抱える対立関係をも払拭できる媒体となりえる可能性があると考えています(究極的な理想社会のあり方を示し、世界中の識者や学者の先生方にご討議いただくことと、反論や批判ではなく代替案を求める事が重要になる)。
そのためには、誰もが理想として受け入れることができる、優れたモデル的なコミュニティの提言が不可欠になります。
コンセンサス会議の開催意義は理想社会実現の可能性を、世界中の宗教・政治・思想・住宅・乗り物・食品・衣料品などが揃い、北は北海道、南は沖縄の間には世界中の気候や気象条件が揃い、技術的にも優れた企業が揃い、漢字・英字・ローマ字・ハングル文字・ひらがな・カタカナなどで彩られた世界一風変わりな新聞があり、物質的にも、気象的にも、精神的にも、思想的にも、宗教的にも、あらゆる角度から理想的なコミュニティのあり方を提言できる殆ど全ての材料が揃う、ここ日本より発信することにあると考えられるのです(世界の気象条件を考察し、日本にモデル的なコミュニティを造ることを提言)。
最終的には、日本が提言するコミュニティのあり方は、地球という小さな孤島の政治・経済・教育などの理想的な維持管理運営システムへと転換されて人々を支え、コンセンサス会議で培われた精神は、人々の中で息づき、恒久的な理想社会を支えることで目的を達成し役割を終えます(完成と共にコンセンサス会議を主催してきたワールド・ピース・ヒロシマは目的を達成し解散)。
原子爆弾投下が人類に教訓として残したことは、軍事施設以外(真珠湾は軍事基地限定攻撃)の領域をも含む広域を一瞬にして破壊する事により、戦争の意味すら知らない子供までも巻き込み、その場限りではなく、非常に長期に渡る後遺症や、被爆による新たな疾病の発症など悲惨な無差別攻撃用の戦闘兵器であることと、今後大きな戦争で核が使用されることがあれば、地球自体が壊れることだと思います。
これらを本当に理解し、訴えることができるのは世界の中で唯一被爆体験を持つ広島だけであることは、誰もが認めるところであり、今後も原爆の悲惨さや核全廃推進活動を継続的に行うことは非常に有意義であると思います。
しかしこうした活動の裏側では、現在もなお核兵器は製造され保有拡散し続けられています。
人々は物事の善し悪しをわきまえているにもかかわらず核を放棄できません。この矛盾した行為を生んでいる理由として考えられることは、自国だけが核を放棄するという勇気が無いことと、武力による征圧もしくは統治方法しか知らないことにあると考えられ、総ての国家が一切の戦闘兵器を必要としない理想社会とはどのようなコミュニティなのかと、その造り方と、具体的なシフト方法が分からないのではないかということです。すなわち勇気などなくても、誰もが犠牲にならなくても、核兵器を放棄することが出来る方法を知らないのではないかということです。
従ってこのたび開催されている平和コンセンサス会議が、この方法に着手しない限り、本当の平和や、戦争をしなくても良い社会の実現はありえないと思います。
原爆の悲惨さを伝承し、核廃絶と戦争反対を訴え、平和社会実現を60年間の長きに渡り続けてきた広島に与えられた天命を達成する時が来たように思えてならないのはわたしだけではないと思います。
ワールド・ピース・ヒロシマ主催の平和コンセンサス会議が以下のことを問題として具体的ビジョン策定を進めることで、本質的な平和実現が可能と思われますので、簡単にまとめさせていただきました。また各々の用語の解説は紙幅の都合上今回はカットさせていただきました。

絶対平和が実現できる理想的な社会の作り方

理想社会の定義
供与(分かち合い)を基盤とし、飢餓や貧困や病気、環境破壊や戦争や犯罪が無く平和で、総ての人が自由公平に幸せに暮らせる生活環境が整備(システム化)された国。

理想社会が達成できない問題点
理想的な社会達成の必要性を理解していながら、なぜ実現できないのか

理想社会が達成できない二つの原因
@ 社会構造的原因(物質面、因果律、科学的:滅亡へ向かう社会構造)
A 精神構造的原因(非物質面、共時律、非科学的:争いが止められない精神構造)

社会構造的原因の除去と解決方法(グランドデザイン策定)
@ 資本主義(略奪基盤:より多くの資本を獲得したものに従うシステム故に争いは絶えない)〜共生主義(共生的自由社会主義)へシフト(供与基盤:利権や所有権、責任などを分かち合い貧富の差を是正し公平化を図る)*新たな主義に切り替え戦争をしなくても良い社会環境の確立。絶対平和達成の必須条件
A 市場経済(物づくり産業基盤:大量生産と大量消費で自然環境破壊型、いずれ人類は滅亡)〜自給圏経済へシフト(自律維持管理型産業基盤:物の必要不必要をすみわけ必要最大限を生産後、維持管理へ切り替え、衣食住を地場で生産しまかなう環境保全型、環境破壊の抑止)*新たな産業構造を基盤とする経済システムの構築。地球温暖化と自然環境破壊抑止の必須条件
B 拝金社会(人性消失社会:お金が無いと生活できない社会環境・利害関係優先社会)〜拝命社会へシフト(人性維持社会:お金が無くても生活できる社会環境・人間関係優先社会)*自給圏経済を基盤に無銭社会構造を構築。無銭無税による人性維持

精神構造的原因の除去と解決方法(ファイナルビジョン策定)
@ 理想実現ができない社会構造を、なぜ構築したかの根源的な謎「自分は誰?(人間・自我・生命)」を解き、解答に基づく社会構造へ作り替える。(各個人が人として完成できるコミュニティを、実際に造り生活をして体験する)*Egoの解決が鍵。
理想が実践できる体験の場(モデル空間)を確立し、人の精神性の覚命を図る

理想社会の実現化方法(リ・クリエイション開始)
二つの原因をクリアーできる理想的生活を営むための社会システム(政治・経済・教育・税金など)を備える新たな生活圏(生活特区)をモデル的に造る。
結果:生活特区が点在するようになりネットワーク化されることで、人と人の本来あるべき姿を見て体験することで新たな概念が生まれ理想社会(国)は完成する。
* 理想的社会システムを備える国の完成に伴い人間は完成し、学問・宗教の目的は達成され完成(終焉)。


平成172005)年73


ヒロシマ平和コンセンサス『鍵となる質問』

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